日本一高い暮れの「なめた鰈」

雑誌「仙台っこ」タイアップ仙台再発見シリーズ
No.5(秋冷号)
=市内書店で1日発売

歳末の仙台で、「なめた鰈」は日本一の高値になります。その不思議を追ってみました。
(MAK)


量も値段も12月は日本一
6,7月ごろスーパーの鮮魚売場で、体長40センチほどの福島産「なめた」に580円の値札が付いていました。冬が旬とはいえ、これが半年後には万単位のお値段になるのですから驚きです。
東京魚市場卸協同組合のホームページは「なめた鰈」は『東北ではなくてはならない正月魚で、12月中旬過ぎから値段が上がる"不思議な魚"です。』と紹介していました。
その実態は、仙都魚類㈱のホームページに載せられていた2006年の「なめた鰈」仙台市場扱高、平均価格のグラフを見ても明らかです。扱いは12月に急増し、量も値段もこの月だけは東京市場を抜いて全国第一位になっています。

「ババガレイ」とは失礼な!
「なめた」の語源は「滑多」で、ヌメリの多さからそう呼ばれるようになったそうですが、正式名称は「ババガレイ」(カレイ目カレイ科ババガレイ属)です。
姿が汚い(ババッチイ)ということでそんな失礼な名前が付けられ、昔は肥料にされていた時期もあったとかー。
もちろんいまでは煮魚としての評価も高く、インターネットの食材辞典は「 なめた」は『千島列島から静岡県までと、日本海各地の沿岸に分布。東北、北海道では高級魚、他の地方では中級魚として扱われている。』と書いています。
日本近海のほぼ七割の地域で漁獲されるこの「なめた」が、なぜ仙台市場で歳末に日本一の高値を呼ぶようになったのでしょうか?。

仙台と三陸の一部地域だけ
さらに調べてみると、東京卸組合が “東北の正月魚 ”としたのは実は誤りで、年越魚として食べられているのは仙台と三陸沿岸の一部地域に限られていることもわかりました。
この習慣は『江戸時代から始まったものらしい』と複数の資料にあるのですが、公開されている伊達家正月膳の献立を見ると、鮭、鰤、海老、ほや、鱈、鯨、鮒、吉次と驚くほどたくさんの海の幸が並んでいるのに “鰈 ”の文字はどこにも見当らないので、「なめた」は歳末だけに食べられてきた特別の魚なのか、或いは、この地域の庶民の間でだけ年越魚として珍重されてきたものなのかもよくわかりません。


仙台白百合女子大学健康栄養学科の宮下ひろみ先生


宮下ひろみ先生の推論

地域食生活を研究されている仙台白百合女子大の健康栄養学科准教授宮下ひろみ先生が挙げた キーワードは “大型、子持ち ”です。
『仙台は昔からお魚に恵まれている土地柄ですから、おそらく冬場になめた鰈がたくさん獲れて、安くて美味しいうえに子孫繁栄に縁起がいということで庶民の年越魚に選ばれたのではないでしょうか』と、先生は発祥の理由を推論されています。
数年前ゼミの学生さんたちに自家の年越料理を写真に撮ってもらったところ、県内に住む10人のうち4人の献立に “なめたの煮付け ”が含まれていたそうで、まだかなりの数の家庭に食習慣として残っていることがわかりました。


宮下ゼミの学生さんが写した自家の年越膳
(なめたの煮付けが添えられています)


料理研究家(萩家庭料理教室主宰)の高橋廣子先生


早めに煮付けて冷凍保存
歳末の値上がりについては、仙台中央卸売市場のホームページも12月早々『値段も比較的お手頃な今の時期に煮付けて冷凍保存しておくことをオススメします』と、消費者側に立ったアドバイスを載せていたことがあります。
しかし、「なめた」の旬は脂がのる10月から年明け3月までといいますから、どうしてもお正月に欠かせないなら、もっと早く秋口に買って煮付けて置くアイデアもあるのでは・・・。
『魚体の成熟度や家庭用冷凍庫の機能のこともありますから、煮付けるのは早くても11月でしょうね』とおっしゃるのは地元テレビでお馴染みの高橋廣子先生(萩家庭料理教室主宰)です。
いつもと同じ調理法でいいのですが大切なのは必ず煮汁と一緒にパックに入れることで、そうしないと身がパサパサになり旨味が全部逃げてしまうのだそうです。
仙台市場の価格グラフをみても11月は値段の安い時期ですから、これも一歩前進ですね。

“昔の習慣 ”いつまでー 
年越魚で有名な富山の 「氷見の寒鰤」はその時期に地元に揚がるものですが、仙台の歳末の「なめた」は釧路、日高などの北海道ものが主体(仙台中央市場HP)といいますから、この年越魚は地場産の意味もすでになくなってしまっているようです。
結局、歳末仙台市場の高値はただ単に昔の習慣だけが生き残って値段を吊り上げている、そんなことのように思えてきます。
長い間市民の間に根付いてきた歳末のお買い物習慣が、冷凍庫の普及や調理の工夫などでこれからどう変っていくのか、成り行きに注目しましょう。

仙台白百合女子大学健康栄養学科HP

萩家庭料理教室HP


<仙台再発見シリーズⅠ「食べ物編」は今回で終了。
12月発行の冬陽号からシリーズⅡ「あれこれ編」となります。

2009年09月29日 18:15 | パーマリンク |TOPページへ   ▲上へ

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コメント (14)

菅原:

仙台再発見シリーズを毎回楽しく拝見しています。
わが家では年越しはおソバなので、「なめた鰈」が仙台で珍重されているとは知りませんでした。
食習慣が日本一の値段を呼んでいるのは驚きでした。

Posted by: 菅原 | 2009年10月07日 11:35

秀:

脂ののった”なめた”の煮付けは確かに美味しい。
それなのに、地元の料理店でついぞお目にかかったことがないのはなぜだろう。
暮れの高値はそれを買う人たちの満足感に支えられているのだと思うが、この価値観は早晩崩れていくと思う。
地元の魚屋さんたちも年越魚などという”際物意識”は捨てて、冬の仙台の名物料理として普及させていくことを考えたらどうなのだろう。

Posted by: 秀 | 2009年10月04日 09:39

G/M:

訳のわからない習慣なんていうものはどこにもあるもんだ。
それにしても、白百合女子大にまともな食生活研究の講座があったとは・・・。単なるお嬢さん学校とばかり思っていたが。

Posted by: G/M | 2009年10月03日 21:44

佐和:

年越しに鰈の煮つけを食べるのも仙台の食文化の一つと考えて良いのではないでしょうか。
ですから今後も守られてよい習慣とは思いますが、なにも歳末に高値で買わなければならないというものでもないので、それぞれにご工夫をされてはいかがかと思います。

Posted by: 佐和 | 2009年10月03日 18:38

Anonymous:

今度の記事は魚屋さんの恨みを買いそうだね。
馬鹿げた習慣にこだわって高い魚を買い込む方がどうかしているんだけどさ。

Posted by: 匿名 | 2009年10月02日 18:30

吾朗:

「なめた」は”年越魚”というほどのものではないと思う。
それでも、仙台市場の扱い高が12月に急に跳ね上がるのをみると、まだ習慣的に買う人がたくさんいるということだろうね。
なにも無理に高値買いをしないで早め手に入れて、冷凍保存しておけばいいのに・・・。
日常の暮らしの中には、意味もない習慣がまだいろいろと残っているのではないだろうか。

Posted by: 吾朗 | 2009年10月02日 16:45

巴流:

伊達家のお正月膳にたくさんの海産物が使われているのにおどろきました。
仙台は昔から海の幸に恵まれていたのですね。
ナメタガレイはもともとは安い庶民のお魚だったと思います。
でも、なんとなく続いてきた習慣がいつの間にか値段を吊り上げてきたなんて、おかしなことがあるものですね。

Posted by: 巴流 | 2009年10月01日 17:06

DON:

昔、クリスマスに国分町にでかけるとぶったくられたものだけど、この記事を読むと似たようなことですね。
年越魚だなんていうけど、本当は何の意味もない魚の煮物。
計算高い奥さん連中のことだから、いずれこのからくりに気がつくんじゃないですか。

Posted by: DON | 2009年10月01日 14:45

碧:

思いも寄らぬ記事を拝見し、驚きあきれてしまいました。
「なめた」の煮付けはおいしいですが、所詮お惣菜料理です。なぜ高いと思いながら暮れに買っていたのか。
目からウロコが落ちたようだというのはこのことでしょうか。

Posted by: 碧 | 2009年10月01日 11:50

淑:

歳末になると「なめたがれい」が高くなるとは思っていましたが、それが仙台だけのこととは知りませんでした。
習慣って恐ろしいものですね。
毎日スーパーで1円でも安いものを選んで買っているのに。

Posted by: 淑 | 2009年10月01日 10:57

nana:

うちのおばあちゃんなどはまだ年越しのなめたの煮物にこだわりがあるようですが、お値段の高いものだけに年に一度のおご馳走の思いが込められているような気がします。
それにしても、自分達で値段を吊り上げているのだと知ったらがっかりするのかも知れません。
11月に煮付けて冷凍しておくことを、今度話してみましょう。

Posted by: nana | 2009年09月30日 22:26

緑子:

最近は家庭用冷凍庫の性能もずんずん良くなってきていますが、やっぱり長期の冷凍保存は味を損ねるようですね。
なめたがれいは節になると本当にお高いですが、11月に煮付けておくのは良いアイデアだと思います。
最近はお節料理さえ若い人たちには人気がありませんから、お年越しになめたの煮付けがなければというご家庭も少なくなっているのではないでしょうか。
歳末に日本一の高値になるとは知りませんでした。

Posted by: 緑子 | 2009年09月30日 20:03

呉山人:

「なめたがれい」は12月より最寒季、2月に獲れたものの方がより脂がのって旨い。
しかも、腹に卵を抱く雌よりも雄の方が身が充実してより一層美味だ。
年越しに”子孫繁栄”の縁起を担ぐ気なら、決まりものの数の子や筋子、タラの子の類でも同じことではないか。
歳末商戦の熱気に引き込まれてつい高値のものに手を出しているのだろうが、いまどき時代錯誤も甚だしい。

Posted by: 呉山人 | 2009年09月30日 15:36

栄治:

そういえば子供の頃、なめたの煮付けを食べたのを思い出します。
大晦日というよりお正月に入ってからだったと思いますが。
今でもその習慣が残っていて、暮れになめたが日本一の高値を呼んでいるというのには正直驚きました。
特に縁起物というわけでもないでしょうに、習慣って恐ろしいものですね。

Posted by: 栄治 | 2009年09月30日 14:20

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